マンションを売却して利益が発生すると税金を支払う必要が出てくるため、どんな場合が課税対象になるのか、利用できる控除制度は何かを知っておくことは大切です。
また、マンションを売却するにあたって、売却代金をほぼそのまま受け取ることができると考えて予定を立てていると、予想以上の支出に驚くこともあります。物件の売買には様々な費用が発生しますので、代表的なものはきちんと把握しましょう。
売買代金受領前に発生する仲介手数料
マンションの売却にかかる諸経費の中でも、高額な部類に入るのが不動産業者の仲介手数料です。
不動産の仲介は、業者を介して買主を探す場合には、依頼した時点では費用が一切発生しません。
その代わり、売買契約を締結した時点で仲介業者に支払う報酬が発生しますので、前もって準備をしておく必要があります。
不動産に仲介手数料を支払う際には、注意しなければいけないポイントがいくつか存在します。
支払うタイミングは仲介業者によって異なりますが、売買代金を受け取った時点で払えばよいというところもあれば、契約を締結した時点で半額近く払わなければならないところもあります。
代金決済の時に支払えばよいというケースでは、実質的には売主の手出しはありません。
しかし、代金決済前に支払う場合には、売主がある程度現金を用意しておく必要があるので、どのタイミングで支払いが発生するのかを確認しておくことをおすすめします。
仲介手数料は、物件の売却価格にもよりますが、金額が高くなるほど手数料も高くなるシステムです。
売却価格が400万円を超えた場合には、売却価格×3%+6万円に消費税を加えて算出した金額が仲介手数料となり、例えば3,000万円で物件を売却した時には、この手数料だけで100万円を超える金額になります。
ただ、買主は借入金等でまとまった資金を用意することができますが、売主まで借金をしなければ売却できないようではトラブルになりかねません。
そこで、通常は手付金を受け取ったときに仲介手数料の一部を清算し、最終的に引き渡し、代金決済を終えた時に残額を清算するというケースがほとんどです。
ただし、売主が一方的に契約を破棄した場合には、すでに受け取った手付金を返すだけでなく違約金も請求されることになります。契約を締結する前に、このまま手続きを進めてよいのかをしっかり確認しておくとよいでしょう。
このほかにも、売買契約を締結した時には契約書に貼る印紙代を請求されます。
印紙代はそこまで大きい金額ではなく、数千万円の物件の売却でも1~3万円程度で済みますが、代金を受け取る前の支出になりますので、いざというときに慌てることがないようにあらかじめ用意しておきましょう。
マンション売却前には抵当権を抹消する
マンションの売却において、ケースバイケースで発生することもある諸経費は、多くの売主が見落としがちであるため、注意が必要です。
例えば、物件の売買に伴う所有権移転登記の費用は買主が負担するため、売主は必要書類を用意するだけで特に報酬等の支払はありません。
しかしその物件に抵当権が設定されている時には、残っているローンを売却代金で一括返済し、抵当権の抹消登記を入れる必要があります。
抵当権抹消とは、金融機関や住宅ローン会社に登録されている抵当権を抹消するために必要な手続きです。
住宅ローンを組む時に、購入するマンションを担保にして資金を借りると、抵当権が住宅ローン会社に設定され、ローンが返済できない時などにマンションを売却し、残金をローン会社が回収するシステムになっています。
抵当権を設定したままでは、マンションを売却することはできないことを覚えておきましょう。
抵当権を設定されていない場合であれば、当然のことながら、抵当権抹消は必要のない作業になります。抵当権の設定をされているマンションでは売却費用を受け取った後、すぐにローン残金の支払いを済ませ、抵当権抹消の手続きをしなくてはなりません。
抵当権抹消の手続きに関しては個人で行うことも可能ですが自分自身の足で管轄の法務局に出向き書類を揃える必要があります。抵当権抹消に掛かる費用とは別に時間を費やすことが予測されますので、その道のエキスパート、司法書士に依頼した方が賢明でしょう。
司法書士に依頼すれば必要書類と本人確認書、抵当権抹消費用さえ準備すれば、後は全て司法書士が行ってくれます。マンションを売却するリスクやデメリットは非常に少なく、メリットが多いことが特徴的です。
抵当権抹消の手続きをし忘れたために物件が売れないなんてことがないように注意し、事前に必要書類を準備しておきましょう。抵当権抹消に掛かる費用は依頼する司法書士によって異なりますが平均して約2万円程なので、それほど高くはない費用になります。
うっかり忘れてしまったということは避けて、正しい手順で手続きをすることがキーポイントになるのです。
マンションを売却する際には間に不動産会社を介して売却するのが一般的であり、その際に掛かる不動産会社の仲介手数料は物件の売却価格により異なってきます。
しかし多くの業者が主な収入源を仲介手数料から得ていることから、上限いっぱいまで手数料を取るところが多いでしょう。その他に掛かる手数料として、不動産会社に追加で払う広告費があります。
通常の広告費や不動産会社が独断で追加の広告を出したり、チラシ配りをしたり、といった費用は売主に支払いの義務はありません。
ところが「売れるように追加でチラシを配りませんか?」などと不動産会社の担当者が提案して来た場合は注意が必要です。”売り主から依頼を受けた追加の広告費”として後々に請求されトラブルになることもあります。
そういった事態を避けるために、些細なことであっても念のために契約書などを作ってもらうように心がけましょう。
マンション売却時の状況によって発生するそのほかの費用
売却する物件を手に入れてから結婚や離婚などで名字が変わったり、引っ越しで住所が変わったりした時には、現在の印鑑証明書では本人と断定することができないため 、登記簿上の名義を現在のものに合わせる必要があります。
この時の名義変更登記の費用も売主の負担となりますので、売却前に登記簿上の名義に変更がないかを確認しておきましょう。
また、登記に必要な印鑑証明書や住民票、権利証などはスムーズに手続きができるように事前に準備しておく必要があります。
現在住んでいる物件を売却する場合には、引っ越し費用も必要になります。アパートなどに引っ越すときには敷金や礼金、火災保険、仲介手数料など様々な費用が発生しますし、実家などに引っ越すときにも引っ越し業者に支払いをしなければなりません。
登記費用の場合には代金決済の時に清算することができますが、引っ越しは物件を引き渡す前に行わなければならないため、売主の手出しとなることがほとんどです。
手付金が入っている時にはその代金の一部を引っ越し代として取っておくなど、トラブルにならないような資金繰りが必要になります。
こういった例外的な支出に関しては、仲介業者でも見落とすことが少なくありません。自分が物件を引き渡すまでの流れをシミュレートしながら、資金に余裕のある状態で手続きを進めていくことをおすすめします。
特に新居のめどが立っていない場合などは、売却代金から各種手数料を差し引いてもすぐに支払える金額を算出し、その範囲内で探す必要があります。
マンションを売却してから忘れたころに支払う費用
マンションを売却する際、その前後で発生する費用というのは比較的支払いがしやすいでしょう。代金決済でまとまった現金を受け取っているため、予想外の費用が発生しても手元に現金があるからです。
しかし、売却してから数ヶ月後に発生した費用については、うっかり見落としていて請求が来てからあわてる方も多いので注意しましょう。
こういった支払いの代表的なものが、不動産の譲渡益にかかる所得税や住民税です。これらの税金は、毎年当該年度の確定申告の時期になってから手続きや納付を行いますので、売却が1月頃であれば、翌年の2~3月になって確定申告を行い、その後納付しなければなりません。
うっかり納税があることを忘れて、不動産を売却した時に得た現金をすべて使い切ってしまうと、税金が納められなくなって後々トラブルになってしまう可能性もあります。
不動産の売却益にかかる税金は、売却した物件を5年以上所有していたかどうかで税率が異なってきます。
5年以上所有していた物件を売却した時は、売却価格から取得費や売却費用を差し引いた金額に対しておよそ20%、5年以下の期間しか所有して利ない物件を売却していなかったときには、およそ39%の税率を乗じた金額が納付額となります。
ただし、売却する物件がマイホームであれば、この譲渡所得から3,000万円の控除を受けることができますので、そこまで高額な売却にならなければ税金はかかりません。
とはいえ、税率が通常の所得税とは異なり、一律となっていますので、控除や必要経費を差し引いても残額が残るような高額で売却をした場合には、確定申告のときまでに必要な納税額を用意しておく必要があります。
会社勤めの場合には毎年年末調整のみで自分で申告することはありませんが、物件を売却した時には源泉徴収票を添えて物件を売却した旨も申告しなければなりませんので、忘れないように税務署に申告しておきましょう。
売買の時期から遅れてこのような費用が発生することもあるため、売却した時に得た現金はすべて使い切るのではなく、ある程度は手元に残してしばらく様子を見るのがおすすめです。
引越し代などの諸費用・諸経費も要確認
上記で紹介したような税金や手数料については、前もって調べて資金を用意しておくことは、それほど想像に難くないでしょう。
しかしマンション売却を進める中で、売却に掛かる直接的な費用の他にも、間接的な費用が掛かってくることはついつい忘れてしまいがちです。
まず住んでいる住宅を売るのですから、当然住居を移すことになり、引っ越し費用が掛かってきます。引っ越し費用の相場はシーズンによって大きく変動します。新生活が始まる年度初め付近の3月・4月が繁忙期で料金が最も高く、通常期の 1.5倍近くまで高騰します。
おおよその目安として、単身での引っ越しであれば3万円から5万円程度、家族4人~5人の引っ越しであれば10万円程度の費用が掛かります。
また大型家具(ピアノ・ベッド・箪笥など)がある場合はクレーンを使うこともあり、さらに料金が割高になる可能性があるでしょう。
さらに掛かってくる費用として、引っ越し先の部屋の大きさが違う場合には家具類などを大幅に買い替える必要が出てきますので、場合によっては数10万円の家具購入費用の出費も念頭に入れておくべきです。
5月~2月の通常期に引っ越しするのであれば、引っ越し業者との価格交渉の成功率や値引き金額が高くなりやすいといったメリットに加え、段ボールの回収や無料サービスがつきやすいといったメリットがあります。
そういったことも踏まえ、物件売却の時期を検討しましょう。ご自身の物件を高く売り、安く引っ越すことが理想的なパターンです。
以上のように、物件売却時に掛かる間接的な諸費用・諸経費は、売却手続きで一杯一杯になっている状態であれば、特に忘れがちな費用なので頭の片隅に入れるかメモに控えておくことが賢明です。
また物件売却後の落ち着いた頃に忘れがちな確定申告にも気をつける必要があります。売却により収益が出ている場合も住居用であれば様々な優遇が受けられますし、赤字であれば一般所得と合わせて翌年の税金が減額されることもあります。
物件売却時期を考える目安として、実際に物件を売り出すまでに不動産会社選びとの媒介契約に1ヶ月程度の期間を有することも覚えておきましょう。
さらに、新居が賃貸になるときには、新しい住居で敷金や礼金、火災保険料などの負担も生じます。先に引っ越しを済ませて買主を募る場合には、売却予定の物件にハウスクリーニングや修繕などを行うこともあり、これらの費用も計算しておく必要があります。
また、年の途中で不動産を売却するときには、固定資産税や都市計画税等は月割で売り主と買主、それぞれが取得していた期間に応じて負担するケースがよく見られます。
売買の話がなかなか進まない場合などは、引き渡しまでの維持費が膨らんでいく危険性もありますので、高額な物件の時ほど売却のタイミングまで検討しておく必要があります。
つまり、物件を高い金額で売ることができてもなかなか買い手が見つからず、維持費の負担が大きくなれば、最初から低めの金額で短期間で売却してしまったほうが手元に残る現金が多くなるケースもあり得るので注意しましょう。
マンション売却で支払う税金の種類
マンション売却時には、おもに三つの税金がかかってくることになります。一つ目は印紙税、二つ目は所得税、そして三つ目は住民税です。
まず初めに、印紙税とは、不動産の売買契約書を作成した時に課税される国税のことを言います。作成した文書に郵便局などで購入した収入印紙を貼り、消印をして納税します。
印紙税の金額は、不動産売買の契約金額によって異なっており、1000万円超から5000万円以下の場合、印紙税は2万円、5000万円超から1億円以下では6万円となります。
もし印紙を貼り忘れた場合、過怠税として収入印紙の3倍が罰金として課せられますので気を付けましょう。
所得税は、不動産を売却した時に利益が出た場合にのみ発生します。 つまり、マンションを購入したときよりも、高く売れた場合に課税されます。
例えば、3000万円で買ったマンションが3500万円で売れた場合は、課税対象となるのは、差額分の500万円です。
また、マンションを購入した時にかかった仲介料などの諸費用も全て差し引くことができますので、500万円からさらに諸費用を差し引いた分が純利益となり課税対象となります。
収める所得税の税率は、売却したマンションをどれだけの期間保有していたかによって変わってきます。5年を超えて保有していた場合は15.315%、5年以下の場合は30.63%となります。
三つ目に住民税ですが、所得税と同じようにマンションを売却した時に利益が出た場合に発生します。
所得税と同様に、購入時と売却時の差額金額ですので、3,000万円で買ったマンションが3,500万円で売却できると、課税対象となるのは差額の500万円です。
住民税は、所得税と同じように、どれだけの期間そのマンションを保有していたかによって変わってきます。5年を超える場合は5%、5年以下の場合は9%となります。
このようにマンションを売却すると印紙税、所得税、住民税がかかってくることがわかりましたが、条件によっては様々な特例や軽減措置を利用することができますので、自分のマンションがそれにあてはまるかどうかしっかり確認することが大切です。
マンション売却時に利用できる特別控除の条件
マンション売却時に条件によっては特別控除と買い換え特例を利用することができます。
特別控除は、住居用として住んでいたマンションを売った時に利益が出ると、特別控除の対象として居住期間の長さに関わらず3000万円までは所得税が免除されます。 具体的な控除条件として以下のことがありますので確認しましょう。
条件の一つ目は、住居用として住んでいるマンションを売ることです。以前に住んでいたマンションを売る場合は、住まなくなった日から計算して3年目の年の12月31日までに売ることが条件になります。
次に、マンションを売った年の前年から前々年までに特別控除や買い換え特例を受けていないことが条件です。
また、譲渡損失の繰越控除制度を受けていないことも必要条件となります。三つ目に、マンションを売った相手が親子や親戚などの関係者でないことが条件です。
しかし、マンションを売却する際に、次のような場合は適用除外となるため注意が必要です。
一つ目は、この特例を受けることを目的にして入居したと認められるマンションである場合、二つ目に、居住用家屋を新築している間に仮住まいとして使用したマンションである場合です。
また、別荘をはじめとした、娯楽や保養のために所有しているマンションも適用除外となります。
次に、買い換え特例ですが、これはマンションを売却した時に利益が3,000万円を超えた場合に適用することができます。
特別控除と同様に所得がプラスになった時に利用でき、マンションを売った時に出た利益で新しい住宅を購入した金額分が、その新しい住宅を売却するまで課税が繰り延べされます。
マンション売却時に利用できる買い換え特例の条件
買い換え特例にも条件がありますので、以下のことを確認しましょう。
まずは、売却するマンションの所有期間と所有者の居住期間が10年以上であることです。
次に、新しく購入した土地の面積が500平米以下であること、もしくは新しく購入した住宅の床面積が50立方米以下であることも条件になります。
そして最後に、マンションを売る相手が家族や親族といった関係者ではないことも条件になっています。
特別控除と買い換え特例は同時に利用することができません。双方の条件を確認しながら、状況に応じて検討することが大切です。
マンション売却時に税金がかからないケース
マンション売却する際に、購入した時よりもマンションの価格が安くなってしまい損をすることがあります。
このような「譲渡損失」が発生した場合、所得税や住民税が軽減される制度「譲渡損失の繰越控除」を利用していきましょう。
譲渡損失の繰越控除は、マンションを売った年の所得税を計算した時に、給与所得や事業所得から譲渡損失を控除することができます。
もしマンションを売った年の所得より譲渡損失が大きくなった場合は、控除しきれなかった金額を翌年以降に繰り越すことができ、最長で3年間から4年間にわたって控除することができます。
ちなみに、この譲渡損失の繰越控除制度は、所得税だけではなく翌年分の住民税にも適用可能です。
給与所得が500万円の方で、譲渡損失が1000万円になった場合、マンションを売った年の所得500万円から、損失の内500万円分が控除となり、所得はゼロとなります。
つまり所得税と翌年の住民税もゼロになり、売却した翌年は、所得500万円から前の年に控除できなかった分の500万円をさらに控除することができます。
なお、譲渡損失の繰越控除制度は、マンションを買い換えた場合と売却しただけの場合で受けられる内容が変わってきますので、条件をしっかり確認しておきましょう。
マンションを買い換えた場合
今まで住んでいたマンションを売った年から翌年の間に新しい家を購入し、さらにその新しい家の住宅ローンが年末の時点で残っている場合に適用されます。
そのため、売却したマンションの譲渡損失額が控除額となり、例えば3,000万円で購入したマンションを2,500万円で売った場合、500万円が控除額となります。
マンションを売却しただけの場合
今まで住んでいたマンションを売却した日の前日までに、そのマンションのローンがまだ残っているときに控除が使えます。
この場合ですと、控除額は住宅ローン残高から売却価格を差し引いた額となります。
例えば、住宅ローンが1000万円残っているマンションを500万円で売却した場合、1,000万円-500万円=500万円の控除ができます。
マンションを売却する際には制度をしっかり利用しよう
今回、マンションを売った際に発生する税金について紹介してきました。印紙税から所得税、住民税と大きく分けてこの三つがマンション売却時に発生していきます。
しかし、条件によっては控除制度を利用することができますので、自分の場合は当てはまるかどうかしっかり確認しておくことが大切です。
マンション売却時に利益が発生した場合には、特別控除と買い換え特例がのどちらかが利用できます。
そして、マンション売却時に損失が出てしまった場合には、譲渡損失の繰越控除制度を利用して最長3年から4年に渡り所得税と住民税を減税することができますので、必ず利用しましょう。
上手にマンションを売却するためにはあらかじめ、どのくらいの支払いがあり、誰に支払うかをシュミレーションすることが重要なポイントになってきます。
ある程度のノウハウを身に付けておけば、後からトラブルに巻き込まれることなく円滑なマンション売却になるでしょう。
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。