不動産物件の購入時、法人として購入した方が得なのか。個人所有にすべきか・・と、迷ったことはありませんか?
不動産投資の基本は、安く買い、高く貸し、高く売ることです。もちろん投資法や運営法は様々ありますが、どんな投資スタイルを取ったとしても、避けては通れないのが税金の支払いです。節税対策次第で手元に残る資金は大きく変わります。
そもそも利益が出ていない物件を除き、税率は法人の方が優遇されるので、不動産を長期間にわたり所有する場合は、法人名義の方が断然有利です。
①所得税より法人税率の方がお得
個人の所得にかかる所得税率と法人税率は、どちらも利益に合わせ税率が上がっていきますが、その上がり方は大きく異なります。
所得税と住民税を合わせた税率表
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
〜195万円以下 | 15% | — |
195万円超~330万円以下 | 20% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 30% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 33% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 43% | 1,536,000円 |
1,800万円超 | 50% | 2,796,000円 |
法人では下記の通りです。
課税所得金額 | 税率 |
~400万円以下 | 約22% |
400万円超~800万円以下 | 約25% |
800万円超 | 約38% |
不動産運用による収益への課税率は、法人約35%。個人約20%~約60です。個人の税率には住民税、個人事業税が含まれます。
個人と法人の税率が逆転する課税所得金額は、900万円です。収益が900万円を超えたら、法人所有にした方が断然有利です。
法人所有のメリットはそれだけではありません。法人所有では不動産収益を役員報酬として、家族へ分配できます。分配する分母が多いほど、税率を抑えることができます。
しかし個人所有では収益を一人で抱え込むので、税率を抑えることができません。
②収益0でも法人の設立は可能?
不動産投資を始める前は収益がない状態ですが、収益0でも法人の設立は可能です。法人を設立してから、不動産を購入した方が、個人で所有し名義を法人に変更するより手間がないでしょう。
ただし銀行から融資を受ける場合、収益、実績ともにない会社が融資を受けるのは、非常に困難です。個人所有の方が法人より融資は受けやすいです。
法人化する際に忘れてはいけないのが、設立費です。株式会社設立時には約30万円の設立費が必要です。合同会社にすると、10万円前後の費用に抑えることも可能です。
また法人地方税の均等割は、例え赤字であっても発生します。東京都では毎期7万円の法人地方税が課されるので、法人地方税以上の節税効果がなければ法人化する意味がなくなります。
③キャピタルゲインを狙うなら、個人所有の方が得だが・・
キャピタルゲインを狙った投資の場合、法人所有より個人所有の方が圧倒的に課税率が低いです。
法人所有では課税率が35%ですが、個人では20%です。ただし購入後5年以内に手放してしまうと、個人の税率は約39%になり、法人の課税率を上回ります。そのため売却は5年後をめどに考えた方がいいでしょう。
しかし現在、キャンピタルゲインを狙えるような物件の数はかなり少なくなっています。事実2012年から中国人富裕層による東京のタワーマンションなどへの爆買いが始まりましたが、現在は爆売りが盛んです。損を出してもいいから一刻も早く売りたいと、叩き売りされているのです。それほど買値より高く物件を売ることは難しいです。不動産経済研究所が発表するマンション市場動向調査の首都圏の数字を見ても、2016年の分譲価格は5490万円で5年前に比べ1千万円ほど上昇しています。しかし2015年より28万円下落しているのです。マンションの価格はピークを超えたと言われています。現在の市場動向を見ると、キャピタルゲインを狙った不動産投資はお勧めできません。